ドナルド・トランプ前大統領の返り咲きは、今年の「世界最大の不確実性要因」とされますが、3月5日のスーパーチューズデイを経て、「もしトラ」から「ほぼトラ」になったとも言われます。11月5日のアメリカ大統領選挙まであと8カ月弱ですが、4年前の大統領選挙と同じく現職の民主党バイデン大統領と共和党トランプ前大統領の再戦が確実となりました。
本当に、トランプ前大統領のアメリカ大統領返り咲きはなるのでしょうか?
バイデン大統領の「一般教書演説」の内容は?
3月7日、バイデン大統領は、上下両院合同会議で、今後1年の施政方針を示す「一般教書演説」を行い、トランプ前大統領への対決姿勢を鮮明にし、共和党予備選を圧勝したトランプ前大統領に対する反撃の狼煙を上げました。
演説の冒頭、「私の前任者はプーチンに『好きなようにすればいい』と言ったが、これは言語道断で危険で、容認できない」と断じ、NATO加盟国への侵攻をロシアのプーチン大統領に促すような発言をしたトランプ前大統領を痛烈に批判しました。また、「自由と民主主義が国の内外で同時に危機にある」、「私の前任者とここにいる何人かの議員は1月6日の真実を葬り去ろうとしている」とし、2021年1月6日の議会襲撃事件を選挙戦の争点にする構えを見せるとともに、ウクライナへの武器供与の必要性と3年で1500万人の雇用創出の実績を強調しました。また、富裕層への増税を進める一方、富の再配分を通じた低所得者層や中間層の底上げで経済活性化を図るとする等、トランプ前大統領の政策との違いを明らかにしました。
トランプ前大統領の反応!バイデン大統領の一般教書演説の評価は?
バイデン大統領の「一般教書演説」に対し、トランプ前大統領は、SNSでリアルタイムの反論を繰り返し、演説終了後には、「最も怒りに満ち思いやりが欠けた過去最悪の一般教書演説だった 国の恥さらしだ!」と発信しました。
ただ、バイデン大統領の一般教書演説は国民には力強くエネルギッシュなものと映ったようです。翌日のCNN世論調査によりますと、高齢問題から疑問符のついていた「大統領の職務遂行能力」について、演説を見ていた無党派層の68%が「信頼している」と回答、演説前の51%から17ポイントも上昇しています。
バイデン大統領は「一般教書演説」を無難に乗り切ったと言えそうです。
女性やヒスパニック等、また、ヘイリー票の行方はどうなるのか!?
「トランプVS.バイデン」となれば現時点ではトランプ前大統領が優勢とされます。「高齢問題」が国民に深刻視されるなどバイデン大統領の状況は4年前よりも不利な状況とされ、実際、各種世論調査の平均をみると、直近でトランプ氏の支持率は47%台となっており、バイデン氏の45%台を上回っています。
プラスになる材料が乏しいバイデン氏にとっては厳しい戦いになるとも予想されています。
ただ、トランプ前大統領には「弱点」もあるとされます。
2月のシエナ大学による有権者の世浪調査によりますと、都市部での女性の投票動向はバイデン56%に対しトランプ34%となっています。都市部などの学歴や所得の高い無党派層の間では中絶の権利を支持したい有権者が多いのでバイデン支持に回る傾向があるとされます。ヒスパニック系やアラブ系も通常は民主党支持者が多いですが、最近の「移民問題」や「ガザ問題」への両者の対応とも複雑に絡み、流動的な要素もあるようです。
そんな中で注目されているのは、ヘイリー氏支持者の票の行方です。
ヘイリー氏は「スーパーチューズデイ」でトランプ氏に1勝14敗となり、その結果を受けて、共和党予備選から撤退しましたが、「トランプ支持」に回った訳ではありません。5日のノースカロライナ州など3州の出口調査では、ヘーリー氏投票者の3分の2以上が11月の本選で共和党候補に投票する意思がないとのことです。CNNによりますとバイデン陣営が「奪取可能」なヘイリー氏支持層を注視しているとのことです。
総括すれば、現時点では「ほぼトラ」とは言えない状況です。トランプ前大統領に投票したくない多くの共和党支持者の存在も顕在化している訳で、ヘイリー氏投票者の票の行方がどうなるか、すなわち、両陣営がこれらの票をどのように獲得するか、今後の選挙戦を占う材料となるでしょう。
今後の日程、まとめ
今後の日程は、7月15日から18日の共和党党大会、8月19日から22日の民主党党大会で、候補者を正式に指名した後、9月16日、10月1日、9日のテレビ討論会等を経て、11月5日に、大統領選の投開票となります。
いずれにしても、現時点では「ほぼトラ」とは言えない状況であり、トランプ、バイデンそれぞれが弱みを抱えるなかで、今後も紆余曲折を経ながら、11月5日を迎えることとなるでしょう。
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